次期大統領ドナルド・トランプ氏のツイートは人種差別犯罪!?

1982年6月19日、当時27歳だった中国系アメリカ人のビンセント・チン氏は1週間後に結婚式を控え、独身最後のパーティーとして親友たちと一緒にデトロイト近郊にあるストリップ・クラブへ行きました。

ビンセント・チン氏
デトロイトと言えば自動車の街ですが、80年代の米国自動車業界は厳しい不況にあり、多くの労働者が失業しました。「俺たちが職を失ったのはトヨタのせいだ」、と日本の自動車会社は目の敵にされ、駐車場にある日本車の窓が叩き割られるなどといった事件が頻繁に起きました。

ストリップ・クラブ内でチン氏を待っていたのは、クライスラー社で工場責任者を当時務めていたロナルド・エバンスと継息子の二人です。チン氏を見るなりエバンスはチン氏を日本人と判断し、「クソ日本人のお陰で多くの労働者が失業した!」、と喧嘩を早速ふっかけました。

他の客に、これ以上の迷惑となることを防ぐため、ストリップ・クラブの責任者はエバンスとチン氏たちを店から追い出しました。しかし喧嘩は外の駐車場でも続き、結果としてチン氏はエバンスにバットで頭を殴られ死亡するという惨事に至ってしまいました。

海外から見ると、今日のアメリカは景気が良いと思うかもしれません。しかし、昨日のブログで記したように、消費者たちの暮らしは楽になっていません。

チャート:dshort.com
上のチャートで分かるように、米国世帯の平均年間名目所得(赤い線)は確かに上昇していますが、実質所得(青い線)は10年前より下がっています。正に、「働けど働けど我が暮らし楽にならざり」、といった状態です。

2ヶ月前、ゼロヘッジは、こんなことを指摘しています。

チャート:ゼロヘッジ
2007年12月以来、米国では170万のウェイターとバーテンダー職が増えた。同期間、製造業はからは150万の職が消えた。
ゼロヘッジの言いたいことは明らかです。米国で増えているのは時給の低い仕事ばかりであり、平均以上の時給を払う仕事が減っています。たとえば、ゼネラル・モーターズの工場で働く人たちの平均時給は21ドル9セントですが、チップを含めたウェイターの平均時給は10ドル5セントです。

そして今日、次期大統領のドナルド・トランプ氏が、トヨタを非難するツイートをしました。


トヨタは、米国でカローラを販売するために、メキシコに新工場を建てると言った。とんでもないことだ!米国内に新工場を建てなさい。そうしないのなら高い関税を払ってもらう。
暴言だ!、と思う人もいると思いますが、このツイートには製造業職を失い、低賃金で働く多くの米国市民の声が凝縮されています。少し話はそれますが、ヒラリー・クリントン氏が選挙で敗けた原因の大きな一つは、苦しい家計をやり繰りしている庶民たちの心をつかむことができなかったからです。選挙運動中、トランプ氏は中西部の州に住む労働者たちと積極的に交流しましたが、最初から勝ちを信じ込んでいたクリントン氏は主要メディアを使って運動するだけで、全く熱意の無い選挙運動でした。

Make America Great Again(米国を再び偉大な国にしよう)、というのがトランプ氏の国民への約束です。米国の利益を最優先し、国民の生活を豊かにしようということに反論はしませんが、次期大統領自らトヨタ非難のツイートには疑問を感じます。

最近のアメリカは人種差別犯罪、憎悪犯罪が顕著になり、昨日も黒人のティーンエージャーが精神的な問題を持つ白人男性を誘拐して暴行するという事件がありました。この暴行の様子はソーシャルメディアを通してライブで中継され、ティーンエージャーたちはトランプ氏を忌み嫌っていることが明白でした。

トランプ氏の反トヨタ・ツイートは、ティーンエージャーたちの暴行と同じ人種差別犯罪だと極論するつもりはありませんが、このツイートが原因となって反日感情が高まる可能性はあります。更に、トランプ氏は中国へ対しても抗戦的です。こんな姿勢が国民へ感染して、1982年6月19日デトロイト近郊で起きた惨事が再現されないことを祈ります。

(参照した記事:Murder of Vincent Chin

Hate Crime, Kidnapping Charges Filed Against Four Blacks In Facebook Live Torture Case

Since 2014 The US Has Added 547,000 Waiters And Bartenders And Lost 36,000 Manufacturing Workers

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