手放しで喜べない原油安

二日前、5年ぶりの安値が報道された原油は今日も下げが続き、こんなツイートが出ています。

「現在の原油価格では、全ての産油国は赤字だ。」 -- Urban Camel
しかし、この原油安のお陰で、米国消費者はガソリン安という恩恵を受けています。下は、最近6ヶ月間のレギュラー・ガソリン価格の推移です。


チャート:GasBuddy.com
6月、全米平均の1ガロンあたりのレギュラー・ガソリンは3ドル68セント、そして今日は2ドル64セントですから、ほぼ30%の大幅下落です。クリスマスの買い物シーズンが既に始まっているだけに、小売業者は、このガソリン安が個人消費の大幅増大につながることを期待しています。

「もしあなたが、下げが続く原油価格は経済に好影響だ、と思っているなら、それは大きな間違いだ」、とマイケル・スナイダー氏(The Economic Collapse)は言います。何故でしょうか?
ドイツ銀行の調査によれば、米国GDPの15%は民間企業による設備投資で占められている。注目は、設備投資の三分の一はエネルギー企業によるものだ。言うまでもなく、下げの止まらない原油価格はエネルギー企業の利益を減少させ、最終的に設備投資も減ってしまう。
たとえば、シェール・オイル業界の大手コノコフィリップスは、2015年度の予算を20%削減することを既に発表している。米国のシェール・ブームは終わったという意味ではない、と会社側は述べているが、他社もコノコフィリップスの決定に追従する可能性がある。
「米国のシェール・ブームは終わったという意味ではない」、ということですが、12月3日、ロイターはこう報道しています。
11月の米国の油井・ガス井掘削認可、40%急減 原油安が影響
2007年頃に始まった米国のシェールオイル、シェールガスブームに急激に歯止めがかかった格好。11月の許可件数は4520件。10月は7227件だった。
大規模なシェール層があるテキサス州のパーミアン盆地、イーグルフォード、ノースダコタ州のバッケンのすべてで、今年初めて許可件数が急減した。
許可件数が減少したことで、60日-90日後のリグ(掘削装置)の稼働数も減るとみられている。
現在の原油価格(WTI原油)は1バレル61ドル32セントです。シェール・オイル1バレルの生産コストは65ドルから67ドルという説が出回っていますが、ライスタッド・エネルギー社のアナリストは50ドルから55ドルが損益分岐点になると述べています。

前回の会議で、OPEC(石油輸出国機構)は一日の生産量を3000万バレルに据え置きました。「価格戦争への突入を余儀なくされた」、と報道されていますが、OPECの狙いはシェール業者を叩き潰すことです。
北米産のシェール・オイルという強力なライバルが台頭する中、OPEC単独での減産もままならず、産油国は安値にどこまで耐えられるかを競い合う「価格戦争」への突入を余儀なくされた。(時事通信)
もし損益分岐点が50ドルから55ドルであるなら、原油価格はまだ下げ足りません。しかし、ここから更なる原油の下落は、米国の雇用状況に悪影響となります。大手コノコフィリップスの来年度予算削減、そして油井・ガス井掘削認可の40%急減というニュースで分かるように、業者たちはシェール業界の先行きに不安を感じています。
シェール・ブームのお陰で、2007年12月以来、米国には136万に及ぶ雇用が創出された。しかし同期間、シェール・ブームの影響を受けなかった州は、合計で42万4000の職を失った。このまま原油の下げが続き、シェール・オイル業界の下向きが顕著になったら、米国の雇用状況はどうなるだろうか? -- The Economic Collapse
下落が止まらない原油価格は、最終的に金融危機を引き起こす、という意見も出ています。シティグループのアナリストによれば、ジャンク債市場の17%はエネルギー企業の社債で占められています。原油の下落が長引くようなら、シェールオイル企業の倒産が相次ぎ、当然の結果として債券はデフォルトになってしまいます。ドイツ銀行のアナリストは、こう述べています。
原油価格が60ドルに下がると、最悪の場合、格付けがCCCからBまでのジャンク債の30%がデフォルトになる可能性がある。もしそんな事態が発生すれば、ジャンク債市場全体に大打撃を与えることだろう。
原油安はガソリン安を生み出し、消費者には確かに嬉しいニュースです。しかし、これ以上の原油安は米国経済に悪影響を与えることになりますから、手放しに喜んでいることはできません。

(参照した記事: 11月の米国の油井・ガス井掘削認可、40%急減 原油安が影響

OPEC's message to US shale: Drop dead

産油国、「価格戦争」に突入=OPEC単独減産に限界

Anyone That Believes That Collapsing Oil Prices Are Good For The Economy Is Crazy

Urban Camelのツイート

コメント

lineの倍 さんのコメント…
前回、2008年の原油価格下落のときと今回の下落の違いについてです。前回はオイルリグの数がすぐ減少したのに、今回は追従が遅れています。いま、シェールオイルにはEasy Moneyが多量に投下されているのでこういう状況になるようです。
http://www.zerohedge.com/news/2014-12-10/its-different-time-rig-count-edition
T Kamada さんの投稿…
lineの倍 さん

記事ありがとうございます。