前向き思考と株投資

物事は前向きに考えることが大切だ、と言われます。最初からダメだと思っていたら本当に失敗してしまいますから、何かに挑戦する時は、先ず「出来る!」と確信してから始めます。昔流の言い方をすれば、「一念岩をも通す」、または「思う念力岩をも通す」といったところになります。

ポジティブに考えればポジティブな結果が起きる。成功を信じて行動すれば成功する、といった前向きな考え方を取り入れてトレードをしている人たちがいます。「私は素晴らしいタイミングで売買することができる」、といった言葉を頭の中で繰り返し、またはそうしている自分を頭の中でイメージすることでトレードの向上をはかります。

これは前に少し書いたことですが、著名トレーダーのラリー・ウィリアムズ氏は「トレードに前向き思考は有害だ」、と述べています。

ラリー・ウィリアムズ氏
「トレードは失敗に終わる。大きな負けになる」、というのが私の信条だ。この信条を受け入れてほしい。「トレードは失敗するぞ」、と最初から思っていれば、必要以上に大量な売買をすることなど起きない。前向き思考や自己暗示が原因となり、多くのトレーダーたちは道理に合わない危険なトレードを行なっている。どう考えても勝ち目がない状態でも、彼らは勝ちを信じてトレードに出動してしまう。正に、飛んで火に入る夏の虫だ。
ラリー・ウィリアムズ氏の意見は稀なものではありません。ワシントン・ポストにこういう記事があります。
The negative power of positive thinking(前向き思考のネガティブなパワー/前向き思考の弊害)
この記事を極めて簡単にまとめるとこうなります。
前向き思考というのは単に自分の他の声を消す思い込みであり、そのお陰で人々は間違ったビジネスや投資判断をすることになる。言い換えれば、揺れる草むらの向う側にはライオンが潜んでいる可能性があるということも忘れてはいけない。
この記事には、こんな例もあげられています。
株の世界には、持ち株が下がったところで買い足すという妄想的な方法がある。要するに、更に買い足すことで持ち株の平均価格を下げ、首尾よく再上昇したところで利食うという希望的観測に基づいたやり方だ。
更に、この記事にはこういう警告もあります。
テレビに出てくる株の専門家の意見には要注意だ。「この株は割安だ、買いだ!」、とあるブローカーが株番組で発言したとしよう。良く解釈すれば、彼はこの株に自信満々であり、前向き偏見のある意見を視聴者に売り込んでいる。悪く解釈すれば、彼の所属する会社は既にその株を買っているから、単に株価の値上がりを狙っているだけかもしれない。
前向き思考を否定するつもりはありません。現に、ワシントン・ポストの記事も認めていますが、エジソンの「一念岩をも通す」の前向き思考がなければ電球が発明されることはなかったでしょう。

ここで思い出したいのは、「一念岩をも通す」とは正反対の「逃げるが勝ち」です。一見卑怯にも思われますが、無駄な愚かな戦いは避けた方が得策です。要するに、私たちは現実的に物事を考える必要があります。「出来る、勝てる!」、と気合を入れてトレードをする前に、ここで買うことは現実的に正しいかどうかをよく考えてみることが大切です。

「トレードは失敗に終わる。大きな負けになる」、という考え方は別に新しいものではありません。ある記事で読みましたが、「最悪の事態を想定する」という考え方は古代ギリシャにもありました。物事を始める前に、最悪なシナリオを頭の中で描くことで、私たちはそれに対処できるかどうかを事前に知ることができます。

人を褒めすぎるのも悪影響のようです。なぜなら、あまりにも良い言葉が連発されると、褒められた本人が、その言葉を全く信じられなくなるからです。ですから、「出来る、絶対に勝てる」と何度も自分に言い聞かせることは、いかに自分に自信が無いかを確信させることになってしまいます。

(参照した記事:The negative power of positive thinking

Why Positive Thinking Doesn't Work!

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