米国:1兆ドル・プラチナ硬貨で借金の返済?

こういう質問をいただきました。
下記のリンクのようなことは可能なのですか?
Obama to pay US debt with trillion-dollar coins?
「オバマ大統領は1兆ドル硬貨を使って米国の負債を返済するのだろうか?」

もちろん、現在アメリカには1兆ドル硬貨は存在しません。では、いったい何の話なのでしょうか?東京新聞から抜粋します。

「財政の崖」第2幕 米大統領に奥の手 1兆ドル硬貨発行 債務の制約回避
オバマ米大統領が政府借り入れの法定上限(債務上限)をめぐる議会との交渉を回避する手段として、一兆ドル(約八十八兆円)のプラチナ硬貨発行を検討しているとの見方が広がっている。債務上限を、政府との財政赤字削減の交渉材料に利用しようとする野党共和党の動きを封じる狙いがある。
記念硬貨発行を想定した連邦法の規定では、プラチナ硬貨は財務長官がデザインや額面を決定できる。政府が一兆ドル硬貨二枚を鋳造し、中央銀行の連邦準備制度理事会(FRB)に預ければ、二兆ドル分の歳出を決済することが可能だ。

正に悪い冗談、人を馬鹿にしたような話ですが、そもそもこんな1兆ドル硬貨の可能性が語られるようになったのは、この報道に原因があります。

(2012年12月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
ガイトナー米財務長官は、12月31日に債務が上限を突破する事態を避けるために、米国は「例外的な措置」をとると議会に伝えた。「財政の崖」の問題で、自動的な歳出の削減と増税がもたらす影響をひとまず先送りした格好だ。

ご察しのとおり、「例外的な措置」=1兆ドル・プラチナ硬貨の発行、と憶測されたわけです。では実際に、こんな硬貨が発行されたら、アメリカはどうなってしまうでしょうか?多くの人たちが言うように、アメリカは極めてひどいインフレに襲われるでしょうか?ノーベル賞を受賞した経済学者、ポール・クルーグマン氏は、こんな事を書いています。

米国には、財務省は好きな単位のプラチナ硬貨を発行できる、という変わった法律がある。もちろん、これは記念コインを意味すると思われるが、財務省が1兆ドル・プラチナ硬貨を発行して、それを連銀に預けることは違法ではない。
現実的に見た場合、1兆ドル・プラチナ硬貨は国債と同様な負債だから、財務省はこの硬貨を最終的に買い戻す必要がある。言い換えれば、1兆ドル・プラチナ硬貨は、子どもだましのようなものだ。しかし、議会で展開されている債務上限問題の馬鹿げた議論を考えれば、1兆ドル・プラチナ硬貨は政治的小道具として使える。
現在の米国経済状態では、連銀がドル紙幣を刷り続けることはインフレの原因にならない。もちろん、この経済状態は永久に続くわけではないから、悪質なインフレを防ぐために連銀は買い続けてきた国債を、適切な時期に市場で売却する必要がある。 

1兆ドル・プラチナ硬貨は市場に注入されるわけでなく、政府が既に割り当てた予算に回されるだけだから悪質なインフレを起こすことはない、という説明をよく聞きます。しかし、こんなコインを発行することは、アメリカの信用を更に下げるだけではないでしょうか?以前、連邦議会予算事務局でディレクターを務めたダグラス・ホルツ・イーキン氏は、こう語っています。

世界の人々はこう言うだろう。「アメリカには財政を管理する能力が全く無い。とうとう子どもだましのコインの発行だ。」
冗談ついでに質問しましょう。1兆ドル・プラチナ硬貨には、だれの顔をのせるべきでしょうか?


ポール・クルーグマン氏


(参照したサイト:Debt in a Time of Zero

Obama to pay US debt with trillion-dollar coins?

「財政の崖」交渉の要 米国の債務上限とは

「財政の崖」第2幕 米大統領に奥の手 1兆ドル硬貨発行 債務の制約回避

Funny Money: Pundits float $1 trillion coin as answer to debt-ceiling standoff

コメント